2012年1月26日木曜日

読者の自由

通勤電車の中で読んでいた「われらの時代/男だけの世界」(新潮文庫)というヘミングウェイの短編集、p86にあった一節。
黒人特有の、低い、なめらかな、丁重な声で、彼は言うのだった。
本当のところは黒人特有かどうかもわからないんだけど、ゴスペルやジャズ、モータウンなどのブラックミュージックを聴いていて、その声の強さに憧れていた身には「なるほど」と感じるんですね。

他にも風景描写の一節や、酒についての一言や。手帳のメモを見ると「チーズとリンゴ」なんてものある。これは「武器よさらば」p.333で、
チーズとリンゴを食べた後のワインは、とてもうまかった。
これはやってみなくちゃと、思うじゃないですか。

こんなふうに、本を読んでいると、たぶん文脈の上からは全く重要じゃないんだろうけど妙に気に入ってしまうフレーズ、なんてのがあります。

で、むしろ全体の意味やおそらく著者が意図したところよりもずっと印象に残っているのはそんな言葉だったりもするわけです。

本を鉱山としたらそういう言葉は自分自身の経験や興味というシャベルで掘り出した宝石のようなものかもしれない。

でね、これは元々の文章に新鮮な発見や感動がたくさんあるからできるんで、著者の意図と無関係にそういう読み方ができるというのも優れた作品の特徴なんじゃないかとも思うんです。

逆に、もっともらしくても体裁のいい一般論や抽象論しかないような表現は退屈です。

小説に限った話ではなくて、今日は職場のイベントで合唱する予定の歌(いわゆるJポップの一曲)の練習を少ししたんですが、その歌詞を読んでいて同じようなことを感じました。

ロックっぽかったりラップっぽかったり体裁はいろいろでも「お父さんお母さんに感謝しよう」みたいなことしか言っていないような歌って、少なくとも詩じゃないよね。

2 件のコメント:

  1. 本当にその通りで。。。体裁だけつくろったような
    歌詞は心になぜか響かないのよね。

    究極、小学校の時になぜかビートルズの”I'm the wairus”(スペル違うかも)っていう曲の歌詞を見て
    愕然としたんだけど、、なぜか、すごく心に残っていて
    今でも案外すきな曲です。

    音楽もそうで、、、やっぱりちょっとひねりのある音が
    好きです。(笑)素直すぎる曲には惹かれないかな。。

    そうそう、なんだかヘミングウェイが無償に読みたくなりました。また何か読み直そう・・

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  2. 小学生で"I Am the Walrus"ってのもすごいね。

    僕は"Strawberry Fields Forever"が好きでした。同じ年に発表されたんだねこの2曲…また奇遇だ(笑)。

    ビートルズのサイケデリック全盛時代かな。

    ヘミングウェイは、昔より今読んでる方がしっくりくる感じで、昨日また短編集を買って来ました。

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